「辞めます」と言いたくなるとき、本当に守りたいものは何か

【「辞めます」と言いたくなるとき、本当に守りたいもの】

~その一言の奥にある「自己防衛」と「承認欲求」~

「もう辞めます」

職場で

そんな言葉を聞くことがあります。

本当に限界なら

辞めることは悪いことではありません。

環境を変えることが

人生を守ることもあります。

しかし

それほど深刻な状況ではないのに

何か気に入らないことが起きるたびに

「もう辞めます」

「こんな会社、辞めてやります」

と口にする人もいます。

そして不思議なことに

本当に辞めたいわけではない場合もあります。

では、

なぜ人は「辞める」という言葉を

使いたくなるのでしょうか。

そこには

少しだけ複雑な心の動きがあります。

【「辞めたい」の正体は、一つではない】

「会社を辞めたい」

という言葉だけを聞くと

その人は

会社そのものが嫌なのだ

と思ってしまいます。

しかし実際には

そうとは限りません。

例えば

「もっと評価してほしい」

「自分の意見を聞いてほしい」

「頑張っていることを分かってほしい」

「大切に扱ってほしい」

「自分の存在価値を認めてほしい」

そんな気持ちが

「辞めたい」という言葉に

置き換わっていることがあります。

つまり

「辞めたい」のではなく

今の自分の扱われ方を変えてほしい

ということです。

ここを理解すると

「辞めます」という言葉の見え方が変わります。

【「辞める」は、強い交渉カードになる】

「辞めます」という言葉には

強い力があります。

会社にとって

人が一人辞めることは

簡単なことではありません。

採用。

教育。

引き継ぎ。

人員配置。

現場への影響。

さまざまな問題が発生します。

だから

「辞めます」と言われると

周囲は動きます。

「どうしたの?」

「何か不満があるの?」

「改善できることはない?」

と話を聞いてくれる。

場合によっては

仕事の内容が変わったり

待遇が変わったり

周囲の態度が変わったりすることもあります。

すると本人は

辞めると言えば、状況が変わる

という経験をします。

ここが分岐点です。

【人は「うまくいった方法」を繰り返す】

人間は

一度うまくいった行動を

もう一度使いやすくなります。

最初は

「本当に苦しくて辞めたい」

だったかもしれません。

でも、

「辞めます」と言ったら

周囲が動いてくれた。

すると

自分の気持ちを伝えるには辞めると言えばいい。

という学習が起こります。

次に不満が出たとき

話し合うよりも

「辞めます」のほうが早い。

そして周囲が動く。

本人も安心する。

こうして、

「辞める」という言葉が

問題解決の手段になってしまう。

【ここには「承認欲求」が隠れている】

人間には

自分は必要とされている

と感じたい欲求があります。

これは特別なことではありません。
 

誰だって

あなたがいてくれて助かる

と言われれば嬉しいものです。

ところが

自分の価値を普段から実感できていない人ほど

「辞める」

という状況をつくることで

自分の存在価値を確認しようと

することがあります。

「私が辞めたら困るでしょう?」

という言葉の奥には

もしかすると

「私は必要な人間ですよね?」

という問いが隠れているのかもしれません。

【「自分を人質にする」という心理】

少し厳しい表現になりますが

ここには

自分自身を人質にするような

構造があります。

「私が辞めたら困りますよね?」
      ⬇︎
「だったら私の希望を聞いてください」

という構造です。

自分の存在を交渉材料にする。

もちろん

本人が意識してやっているとは限りません。

むしろ

自分の気持ちをどう伝えたらいいのか

分からないからこそ

一番強いカードである

「辞める」を使っているのかもしれません。

となれば

単純に「わがまま」と

片付けるのは少し違います。

【その裏には「傷つきたくない自分」がいる】

もう一つ

重要な心理があります。

それが自己防衛です。

仕事をしていれば

必ず自分の未熟さに気づく瞬間があります。
  

・失敗する。

・注意される。

・期待に応えられない。

・後輩に追い抜かれる。

・自分の提案が否定される。

こうした経験は

決して気持ちのいいものではありません。

しかし

人はこうした経験を通して成長します。

ところが、

そこで

「もう辞めます」と言えば

自分の未熟さと向き合わずに済みます。

「自分が悪かったのかもしれない」

と考える前に

「こんな会社だからダメなんだ」

と環境の問題に置き換えることができます。
 

これは

心を守るためには非常に有効です。
 

しかし

成長という意味では少し危険です。

【環境を変えると自分から逃げるは違う】

転職を何度も繰り返す人が   

必ずしも

問題を抱えているわけではありません。

より良い環境を求めて

転職することは問題ありません。
  

問題なのは

環境を変えれば、すべて解決する

と考えてしまうことです。 

例えば

・上司が変わった。

・会社が変わった。

・仕事内容が変わった。

それでも

また同じような不満が出てくる。

「上司が分かってくれない」

「会社が評価してくれない」

「自分ばかり大変だ」

そして

また「辞めたい」

このとき必要なのは

次の会社を探すことだけではありません。

一度、

環境ではなく

自分の中にも繰り返している

パターンがないだろうか?

と考えることです。

【本当に怖いのは逃げることではない】
 

逃げること自体が

悪いわけではありません。
 

・危険な場所から逃げる。

・限界になる前に環境を変える。

それは

自分を守るために必要なことです。

本当に怖いのは

嫌なことが起きるたびに

逃げることでしか自分を守れなくなること

なのです。

なぜなら、

人生から   

『乗り越える経験』

が少しずつ失われていくからです。

【成長には「適度な負荷」が必要】

何の負荷もかけなければ

筋肉は強くなりません。
 

仕事も同じです。

・少し難しい仕事。

・苦手な人とのコミュニケーション。

・厳しいフィードバック。

・思い通りにならない経験。

・失敗。
 

こうした適度な負荷が

人を成長させます。

もちろん

負荷が強すぎれば壊れてしまいます。

だから

「耐えろ」と言っているのではありません。

大切なのは

これは自分を壊す負荷なのか

それとも成長させる負荷なのか?

を見極めることです。

 

【辞めないことが成長ではない】

ここも重要です。

「何があっても辞めるな」

という考え方も少し危険です。

本当に自分を壊してしまう環境なら

辞める勇気が必要です。

しかし、

「嫌だから辞める」

と、

「必要だから辞める」は違います。

さらに

「辞めたいから辞める」

と、

「考えた結果、辞める」

も違います。

大切なのは

感情で決めるのか意思で決めるのか

です。

【自立した人は辞めると言わなくても選べる】

本当の自立とは 

会社を辞めないことではありません。

むしろ

いつでも辞められるけれど今はここで働く

という状態です。
 

・自分の能力がある。

・経験がある。

・人とのつながりがある。

・どこでも通用する力がある。

だから

「ここしかない」と思わない。

そして

「辞めてやる」とも言わない。

必要なら辞める。

必要なら残る。

その選択を自分で冷静に決められる。

これが

本当の意味での自立なのだと私は思います。

【辞めますを相談がありますに変えてみる】

もし

「もう辞めます」

と言いたくなったら

一度だけ言葉を変えてみる。
 

「少し相談があります」

これだけでも

心理的には大きく変わります。
 

「私は何が嫌なのか?」

「何を変えてほしいのか?」

「自分には何ができるのか?」

「会社に求めているものは何なのか?」
 

を整理して話すことができます。

「辞める」という結論から入るのではなく

「どうすれば、この問題を解決できるか?」

から始める。

そのほうが

自分自身の成長にもつながります。

最後に

「もう辞めます」

と言いたくなる自分を

責める必要はありません。
 

その言葉の奥には

「分かってほしい」

「認めてほしい」

「大切にしてほしい」

「これ以上傷つきたくない」

という

大切な感情があるのかもしれません。

だからこそ

その言葉をすぐ否定するのではなく

一度

自分に問いかけてみる。

「私は、本当に会社を辞めたいのか?」

「それとも、今の自分を変えてほしいのか?」

「それとも、自分自身が傷つかないようにしているのか?」

そして

もう一つ。
 

「この問題を乗り越えた先に、

今の自分より成長した自分はいないだろうか?」

と考えてみる。

答えが「辞める」なら

それも立派な選択です。

でも

もし答えが

「本当は、もう少し認めてもらいたい」

「本当は、もう少し成長したい」

だったなら

辞める前に

もう一歩だけ踏み込んでみる。
 

人は

嫌なことから逃げたときより

逃げたい自分と一度向き合ったときに

強くなることがあります。

会社に残ることが正解なのではありません。

辞めることが正解なのでもありません。

大切なのは

「辞める」という言葉を

誰かを動かすためのカードにしないこと。

そして

自分の人生を自分で選べる人になること。

「辞めます」と言わなくても 

自分の価値を証明できる。

「辞めるしかない」と思わなくても

自分の未来を選べる。

そんな状態こそ

本当の意味での

自分を大切にするということ

になるのではないでしょうか。

では最後にお待ちかねの川柳です。

 
辞める前 

自分の心に 

聞いてみる

byくさか