「伝えた」と「伝わった」の違い
「伝えた」と「伝わった」の違い
~「言った・説明した・メールした」
だけでは、伝わったことにならない~
「ちゃんと伝えたのに‥」
「前にも言ったのに‥」
「何度も説明したのに‥」
仕事をしていると
こんな言葉を聞くことがあります。
ここで一度、
考えてみたいことがあります。
「言った」
「説明した」
「メールした」
これらはすべて
「自分が伝えた」という事実です。
しかし
それだけで本当に
「相手に伝わった」と言えるのでしょうか?
■「伝えた」と「伝わった」は違う
例えば
指導する側が
「10の力で教えた」
と思っていても
相手に届いているのは
「3」かもしれません。
自分では
これだけ丁寧に説明したのだから
分かるはずと思っている。
でも相手は
「結局、何をすればいいの?」
と思っているかもしれません。
この差が
「伝えた」と「伝わった」の差です。
■現場で起きる「すれ違い」
例えば
上司が部下に
この仕事、前回と同じようにやっておいて。
と伝えたとします。
上司にとっては
「前回と同じ」で十分分かる。
ところが部下は
「どこまで同じにすればいい?」
「期限は前回と同じ?」
「優先順位は?」
と迷っているかもしれません。
つまり
「伝えた側の意味」と
「受け取った側の意味」が
一致しているとは限らないということ。
ここに
コミュニケーションの
大きな落とし穴があります。
■「これくらい分かるだろう」が落とし穴
伝わらない原因の一つに
指導する側の
「これくらい分かるだろう」
があります。
・専門用語を使ってしまう
・説明の順番を省いてしまう
・前提を説明せずに話してしまう
・自分には当たり前のことを
相手も知っていると思ってしまう
しかし
自分にとっての「当たり前」が
相手にとっての「当たり前」とは限りません。
特に
経験のある人ほど
この落とし穴にはまりやすい。
知識や経験が増えるほど
こんなことは説明しなくても
分かるだろうと思ってしまうからです。
■伝えることのゴールは「話すこと」ではない
では
「伝わった」とは
どういう状態なのでしょうか?
私は
相手が理解し
自分の言葉で説明でき
実際に行動できる状態だと考えています。
例えば
「今の説明を自分の言葉で
説明してみてください」
と聞いてみる。
相手が
「つまり、◯◯ということですね」
と説明できる。
ここまでできれば
少なくとも
言葉として理解できている
可能性が高くなります。
しかし
本当に大切なのはここからです。
■「分かりました」だけでは確認にならない
人に何かを説明したあと
「分かりました」と言われると
つい安心してしまいます。
でも
「分かりました」
という言葉だけでは
本当に理解したかどうかは分かりません。
だからこそ
アウトプットしてもらう。
「では、どういう意味だと受け取りましたか?」
「自分の言葉で説明すると?」
「では、最初に何をしますか?」
言葉にしてもらうことで
相手の理解度が見えてきます。
■そして、最後は「行動」を見る
特に
トレーナーや上司
リーダーなど
人を指導する立場では
言葉だけで判断してはいけません。
「分かりました」と言っていても
実際には分かっていないことがあります。
だからこそ
「では、一度やってみましょう」
と、実際に行動してもらう。
トレーニングなら
フォームを実際にやってもらう。
仕事なら
教えた内容を実際にやってもらう。
すると
「どこまで伝わっているのか」
が見えてきます。
つまり
「言葉の復唱」と「実際の行動」
この2つが
「伝わったかどうか」を確認する
大切なアウトプットになります。
■伝わったかを確認するチェックリスト
説明したあと
次のことを確認してみる。
【言葉の確認】
□「どういう意味だと受け取りましたか?」
□「自分の言葉で説明すると、どうなりますか?」
□「一番大切なポイントは何だと思いますか?」
【行動の確認】
□「では、まず何をしますか?」
□「一度やってみましょう」
□「実際にやってみて、分からないところはありますか?」
【指導側の確認】
□専門用語を使いすぎていないか?
□説明の順番は分かりやすかったか?
□目的を伝えたか?
□具体的な行動まで示したか?
□相手の理解度を確認したか?
この確認を入れるだけで
言ったつもりのコミュニケーションから
伝わるコミュニケーションへ変わっていきます。
■伝わらなかったとき、相手だけを責めない
「なんで分からないんだ?」
「前にも言ったよね?」
「ちゃんと説明したでしょ?」
そう言いたくなる気持ちも分かります。
しかし
そこで相手だけを責める前に
一度
自分に問いかけてみる。
・自分の伝え方に
問題はなかっただろうか?
・言葉が難しくなかったか?
・説明の順番は適切だったか?
・目的を伝えたか?
・具体的な行動まで示したか?
・相手の理解度を確認したか?
「伝わらなかった」ことを
相手の能力だけの問題にしない。
これも
指導する側に必要な姿勢だと私は思います。
■伝える力=確認する力
本当に伝えるのが上手な人は
一方的に話す人ではありません。
話したあとに
確認する人です。
・どういう意味だと受け取りましたか?
・自分の言葉で説明すると?
・では、まず何をしますか?
・一度やってみましょう
こうやって
相手の言葉と行動を確認する。
「伝える力」とは
「話す力」だけではありません。
「伝わったかを確認する力」でもあるのです。
■「伝えた」で終わらない
「言った」
「説明した」
「メールした」
「注意した」
ここで終われば
それは
「伝えた」だけです。
大切なのは
その先。
・相手はどう受け取ったのか?
・本当に理解できたのか?
・自分の言葉で説明できるのか?
・実際の行動に変化があるのか?
ここまで確認して
初めて
「伝わった」
と言えるのではないでしょうか。
■人を育てる立場だからこそ
トレーナーでも
上司でも
リーダーでも
人を育てる立場になるほど
この違いは重要になります。
自分が分かっていることと
相手に分かるように伝えることは
まったく別の能力です。
知識が豊富な人が
必ずしも
伝えるのが上手いとは限りません。
本当に伝えるのが上手な人は
相手の立場に立って
言葉を選び、
順番を考え、
理解を確認し、
最後は行動まで見届けます。
■「伝える」の本当のゴール
「私はちゃんと伝えた」
そう思ったときこそ
一度、
自分に問いかけてみる。
「本当に、相手に伝わっただろうか?」
そして
言葉だけではなく
相手の言葉と行動を見る。
伝えた側の満足ではなく
伝わった側の変化を見る。
「伝えた」で終わらない。
「伝わった」まで確認する。
それが
人を育てる立場にある人の
「伝える責任」なのだと思います。
では最後にお待ちかねの川柳です。
言っただけ
届いたつもりに
ならぬこと
byくさか


